建築・環境デザイン学科Department of Architecture and Environmental Design

[優秀賞]
伊藤美菜穂|おおくまトマソン〜福島県大熊町における路上観察的復興の有効性〜
山形県出身
佐藤充ゼミ

本研究は、原発事故により全町避難を経験した福島県大熊町を対象に、震災後の風景の読み取りから建築的提案を行うものである。町に残る機能を失った構造物を「おおくまトマソン」と捉え直し、消えゆく風景に宿る記憶の継承のあり方を探る。現地観察から住宅跡地や空白化した土地の特異性を読み取り、園芸を媒介とした小さな建築的介入による風景の再編を行う。忘却の速度を緩め、記憶と未来をつなぐ新たな風景像を提示する。


佐藤 充 准教授 評
東日本大震災から15年が経ち、未曾有の大震災は人々の記憶から忘却し、過去のものへと風化しつつある。福島県大熊町を調査に行った際、中間貯蔵事業情報センターの展示モニターに映る元住民の大熊町への切実な想いに心打たれた。
本作品は、かつて赤瀬川原平らによって提唱された「超芸術トマソン」になぞらえ、踏査から得られた門や塀、玄関のステップなど人々の暮らしが、そこに確かに存在していたことを断片的に示す構築物を「おおくまトマソン」と称し、それらを手がかりにした復興計画である。復興といってもその土地のコンテクストを一掃し、震災前の住宅地に再生・発展させるということではない。本作品は、むしろその対極にある。現在の環境に極力インパクトを与えず、かつて住宅が存在していた空地を余白として残し、「おおくまトマソン」に僅かな建築操作を加え、自然の時の流れの中でゆっくりと人々の暮らしに寄り添う庭に手入れしていく園芸手法を用いて風景を紡いでいく。過去と未来をつなぐための復興の新たなかたちを示している。