文芸学科Department of Literary Arts

[最優秀賞]
山村優梨香|羊の影には
山形県出身
横井周子ゼミ
小説


横井周子  准教授 評
「無キャ」と「ギャル」のシスターフッド×ホラー。四年間ホラーを書き続けてきた作者の、大学生活集大成となる快作だ。

羊のように群れに埋没するメイと、狼のように孤独をまとうギャルのミキ。ある怪異を機に出会った正反対の二人の関係性は、友情や共依存といった既存の言葉ではくくりきれない深度へと変貌していく。ホラーの意匠を凝らしながらも、その根底には、若い女性が抱える孤独や不安、他者への羨望といった普遍的なテーマが貫かれている。そして作者のやわらかい眼差しは、物語に多層的な響きを与えている。大好きな人がくれた優しさも恐怖も、この世界を形作る切実な手触りであることに違いはないのだ、と。

構成の巧みさにも触れておきたい。二段構えのどんでん返しへと至る道筋は極めて周到だ。読者は「信頼できない語り手」のスリルを味わいながら、衝撃の結末まで一気に駆け抜けることになるだろう。