[優秀賞]
八百板暖大|脱皮/タカムラ現義解
福島県出身
ナカタニD.ゼミ
ナカタニD. 准教授 評
マンガは、他のどの表現分野よりも作者の実力や正体がバレやすいメディアである。そこを乗り越えるには、生活の中心に自分のマンガを据え、日々考え、描き続けることでしか自身の表現の武器にはたどり着けない。才能と呼ばれるものの多くは、そうした覚悟と愚直な積み重ねの賜物だ。彼のこの2作品は、その地点にたどり着くまでの4年間の歩みを、確かなかたちで示している。
「脱皮」は、思春期特有の心身の変化や不安を、独自の設定と寓意で描いた共感性の高い作品である。ラストの描写をめぐって激しく議論した際、彼は教室から離れ、どこかで考え抜いた挙句、その日の夜遅くにブラッシュアップしたネームを持ってきた。この1 日が彼にとって大きな起点となった。そして妥協せず、媚びることなく、その時点での自分の正体を真摯にさらけ出して描く覚悟をみせた。
「タカムラ現義解」は、“裁く側” の存在が現世の文化に触れながら人間理解を深め、“裁く者も裁かれる” という問いへと着地点とする構成が鋭い。幅広い世代に響き、余韻を残す一作と言えるだろう。よくここまでたどり着いたと思う。それだけの矜持をもって取り組んできた八百板暖大の、これが紛れもない現在地である。