美術科 工芸コースDepartment of Fine Arts Crafts

[優秀賞]
北原百瑛|景色をつくる
坂井直樹ゼミ
H120×W120×D60 mm〜H2000×W800×D100 mm 鉄、真鍮、ステンレス、岩絵具、テンペラ、胡粉ジェッソ

散歩道で、さまざまなものが影響し合い、陰をつくる中、陽に向かって力強く葉をのばす植物に出会った。
そこにあったのは、静かで、確かな生命の気配。
カタバミの姿を借り、その景色が特別な場所ではなく、確かに身近に在ることを感じられる作品を制作した。


坂井直樹 准教授 評
作者が制作において最も大切にしたのは、「空気感」である。
金属工芸における制作は、いわば“宿命”とも言える制約と常に隣り合わせにある。素材の特性に耳を傾けること、技術としての作法を守ること。その双方のバランスに心を砕くあまり、制作の気持ちが追いつかなくなることも少なくない。
しかし本作において作者は、「日常」と「風景」を制作の軸に据えた。人と人、モノと人、そのあいだに生まれる距離感を、丁寧に、そしてやさしくすくい取っている。その価値観をもとに世界を再構築し、素材と対話を重ね、工芸的手法を通してこの独自の「空気感」を立ち上げた。
見る側の「人」をもてなそうとする気持ち、「人」と「人」を結びつけようとする思いに満ちた本作は、作者の内面の豊かさを感じさせ、鑑賞者に静かな喜びをもたらしてくれる。今後彼女が、金属に携わる環境の中で、より一層「人」に寄り添い、新たな喜びを生む「景色」を創出していくことを、心から期待したい。