美術科 彫刻コースDepartment of Fine Arts Sculpture

[最優秀賞]
金川心音|山、のち空を想う
北海道出身
吉賀伸ゼミ
H2700×W5000×D2500 mm

4年一一体の細胞が入れ替わるように、ここでの生活が経るごとに更新されていく。
日常に文字が視覚的に存在する。既知が未知となって違和感になる。日常が少し変わっていく様はとても心地よかった。山はどこか遠くを見ていて、家にやってきた多肉植物は南国気分。たまに小劇場へ足を運んで、目に映した物語を抱えて帰ってくる。そんな生活。


吉賀伸 教授 評
メタボリズム建築を想わせるシンボリックな塔。大きな花が咲いたサボテン。3本足の山。一見して脈絡のないこれらは、何を表象しているのだろうか。ユニークなかたちと色に誘われながら、作品の周囲をぐるぐると回り、あれこれと思索を巡らしてしまう。ところどころの断面にある効果音の文字によって脳内に映像が浮かび、不動の物体とのギャップでイメージが増幅され、山やサボテンや建物がゆらゆらと動きだす。思わず引き込まれてしまった作品の世界から一歩離れて眺めると、それぞれが一本の木から彫り出されていることに気がつく。現実の風景の中にある樹木の、さらにその内側に広がる不可思議な風景。この作品では、入れ子状の構造、様々なスケールの混在、記号イメージの掛け合わせによって、空想の世界に奥行きが生まれている。鑑賞者に視点の変化を楽しませる仕掛けと発見が巧みに散りばめられた、圧巻の秀作だ。
金川さんは、とても研究熱心で、誰よりも制作に打ち込んできた。才能とは正に努力の先にあるもの。この卒業制作で見事に開花させたと確信している。これからも遊び心を持ちながら研究に邁進し、さらなる高みを目指してもらいたい