美術科 版画コースDepartment of Fine Arts Printmaking

[最優秀賞]
戸田慶士朗|外縁とふり
山形県出身
木版画、紙漉き

本質的な私を隠す「演技」と呼ぶべき仮面の裏には自己欺瞞という名の服を重ねに重ね、着膨れした怪物が横たわっている。
私にとって服を着ることは本質を取り繕い覆い隠すことであり、それは自己の喪失を加速させ自分が何者であったかも思い出せなくさせる。
ただ記憶に残るのは自転車を手で押す彼に言葉ひとつかけることさえできなかった事実だけである。
その事実が私が私自身を覆い隠すことに駆り立てる。


結城泰介 評
戸田はファッションに強い関心を持っている。その関心は流行といった一過性のものではなく、例えば1950年代のアメリカで炭鉱夫が作業時に着用していたビンテージ・ジーンズを購入するなど、服その物の文脈や本来の役割に向けられていた。2年次よりファッションとアートの融合をキーワードに制作を開始、進級制作では木版で紙片に布の質を刷り上げた紙片を縫い合わせた等身大のジーンズを制作し、モデルとした本物のビンテージ・ジーンズと並べ展示した。しかしファッションにアートを融合させる手段として、服の形、例えばジーンズやジャケットなど既存の形に落とし込む事に捉われ、アートとしての独自性が見出せず長い間苦心する事になる。
アートとは、自身の内面を曝け出す行為である。つまりは裸の自分そのものだと言える。そんな自身の分身である作品に「服を着る事は着る者の本質を覆い隠す行為」と言い切る作者の概念が重なる事で、ファッションにアートをではなく、アートにファッションの概念を取り入れる視点に切り変わった様に思う。今回の卒業制作の一連の作品では、「服を着る」=「弱い自分を隠し違う何かに変容させる」という戸田のファッションに対する概念が絵画に落とし込まれる事で作品として成立しているのである。
木版で刷り重ねられた繊細な色調も美しく、配置にも気を使った美しいインスタレーションとなった。