[優秀賞]
国分雛子|①一途すぎる泥棒 ②北オールぶり天 ③ショートステイ◇地獄 ④アートブック「促すのは、本能寺Z」
福島県出身
①-③1580×590×40mm ④210×148mm シルクスクリーン、コラージュ、リソグラフ
中村桂子 評
それは二週間ほど前だったか。版画作品とともに、そのアイディアの元になった物語をまとめた本も展示したいと話していた彼女と廊下ですれ違い「本どうなった?」と聞いたのである。製本の作業で困ってやしないか。すると「それがもうスンバラしいんですよ〜」と腕を振りながら小躍りするではないか。あまりに自然で軽やかで「あ、よ、よかったね」などとモグモグ答えるしかなかった私はかなり間抜けで、つまりちょっと気圧されてしまったのである。楽しいことを楽しい!と心から喜ぶこと。自分の作り出すものに素直にドキドキ、ズンズン進めること。
本に書かれた物語は、膨大な新聞の切り抜きによって作られている。来る日も来る日も新聞をめくり、文字や気になった言葉を丁寧に切り取り、眺める。感覚が始動し始め、解体された言葉から新たな物語が紡がれていく。この作業を始めた頃、コクブンは自分のスタイルを模索し少し霧の中にいたようにも思う。手探りで進め。ズンズン、ズンズン。未知の場所を行く探検隊。作品はその報告書であり測量された地図のように見えた。色やインクの質が丁寧に選ばれ、シルクスクリーン技法で一版ずつ刷り重ねて、その姿が明らかになっていく。起承転結も定かではない不思議な世界。なのに引き込まれるのはなぜだ。インクと一緒にコクブンのドキドキが、トキメキが刷り込まれているからに違いない。スンバラしい〜じゃないか。