[優秀賞]
宮本ひまり|main character
茨城県出身
狩野宏明ゼミ
2,910×1,880mm
狩野宏明 准教授 評
少女マンガを想起させる人物像と、象徴主義的な絵画表現が絶妙に融合した力作である。物語の主人公と架空の古代遺跡、そこに絡み合う植物が、周到に練り上げられた構図の中で共存している。建物や鉱物、植物、人物の瞳に至るまで、色彩が煌めき、まるでガラス細工や宝石でできた世界にも見える。本作には、これまで宮本さんが制作してきたドローイングや油彩によって培われた構成力と色彩感覚が見事に結実している。そして現実の場所やモチーフを取材した経験と丹念な描写が、空想の世界に深い真実味を与えている。
日本の少女マンガは、アール・ヌーヴォーや象徴主義、ヴィクトリア朝絵画といった19世紀後半から20世紀初頭の西洋美術の影響を色濃く受けている。宮本さんの作品は、ミュシャ、クリムト、モロー、ミレイへと連なる日本の表象文化の系譜を、油彩を用いて新たに展開した試みとしても意義深い。
彼女が本作のテーマとして掲げる「万能感」という言葉は、早朝から夜まで毎日着実に描き続けてきた積み重ねがあるからこそ、強い説得力を持つ。それは、まだ到達していない場所からの景色を見るために、少し背伸びをしながら登り続けるための彼女の信念であるように思われる。