美術科 洋画コースDepartment of Fine Arts Oil Painting

[優秀賞]
鈴木仁衣奈|ネオ・プリマトゥス〜並存・収束・静寂〜
北海道出身
金子朋樹ゼミ
1940×1303㎜ 3枚 パネル/キャンバス/アクリル/ジェルメディウム/色鉛筆

制作の根底にあるのは、進化の連続体に属する「生物としてのヒト」へ立ち返りたいという憧憬である。人類の起源と行方を内包する像”ネオ・プリマトゥス”と、透明層を幾度にも重ねた画面造形を通して、太古から私たちの身体に累積してきた生命記憶や人類史をなぞる表現を試みた。本作は、多様な人類がひとつの種”ホモ・サピエンス”へ収束した過去と、その行方を描いた組作品である。


木原正徳 教授 評
 テーマを模索する中で、ある日彼女は「生命記憶」という言葉に出会う。「個」の記憶ではなく「生物としてのヒト」の遺伝子に刻み込まれ、連綿と受け継がれる記憶。その言葉をヒントに、彼女は「人類の起源と行方」を壮大な物語として表現しようと試みた。記憶の堆積を絵具層のレイヤーに置き換え、独自の色彩と形態感覚を駆使し、大小合わせて12点の組み作品として描き切った。メディウムを分厚く何層にも塗り重ねることによって獲得した特異な画肌と質感は、異様な世界観と相まって展示空間の中で異彩を放っている。
 向上心に溢れ、誠実でいつもひたむきに制作に向かう姿勢は入学時から一貫していた。しかしその真面目さゆえに、いつも作品は固く伸びしろは読めなかった。制作意識に変化が見えたのは3年時の課題「抽象化へのアプローチ」だった。思考の柔軟性がひときわ求められるこの課題、特に彼女には難しいと僕は思っていたが、意外にもその時にスッと出てきたのが今回のレイヤー(重層)の意識であった。
 守り固まりかける気持ちを揺さぶりほどきながら、絶えず前に進もうとする姿勢はこの4年間で身につけた。大学院進学への強い意志、そして「美術新人賞デビュー2026」(月刊美術主催)でのグランプリ受賞。賞金に加え副賞として銀座での個展開催権の獲得である。やっと辿り着いた「今」を踏み台に、更に高みを目指す彼女のこれからを僕は信じ、そして楽しみにしている。