美術科 洋画コースDepartment of Fine Arts Oil Painting

[優秀賞]
佐々木杜鞠|スプラウト
神奈川県出身
村上滋郎ゼミ
1,620×1,940mm キャンバスに油彩

繰り返される振る舞いの中に、この肉体は確かに存在するのだろうか。
本作ではデカルコマニーを用いた手法で振る舞いのズレを表現し、また絵画の一部を展示室外に持ち出すことで絵画の概念的な枠組みを越境する試みをした。


村上滋郎 准教授 評
 洋画コースのゼミ生であり、私がディレクターとして関わるTIPのメンバーでもあり、二つの立場から関わった一年だった。杜鞠さんがゼミに入ってきたタイミングで、どのような作品の展開を見せてくれるのか、とても楽しみにしていた。
 杜鞠さんの印象を決定づけたのは、2年次の「立体から絵画へ」の演習である。学内で拾った伐採木を〈悠創の丘近くの空き地〉へ約200メートル引きずり、垂直に立て、やがて倒す。その一連のプロセスを〈立体〉から〈平面〉への変換として捉え、木の跡が残った地面を絵画と見なす発想には、正直驚かされた。さらには、背中にできた発疹を友人にフロッタージュしてもらい、「地球から見れば、突如立った木は発疹のようなものかもしれない」と語る。この視点は一休さんのトンチのような地球規模の想像力であり、いたずらのようでいて非常に鋭い。まるでサッカーにおいて閃きや創造性のあるプレーで観客を魅了するファンタジスタのようだと思った。
 今回の卒業制作《スプラウト》もまた、ランドアートの文脈を用いながら、絵画をささやかに拡張する試みである。学内という自身の生活圏に、気づく人にだけ気づかれるように絵画の断片を散りばめる。その控えめで静かなスケール感こそが、杜鞠さんらしさである。フロッタージュやデカルコマニーといった手法に共通するのは、身体性を伴った行為の強さだ。これはSNS社会に見られる、仮想空間・デジタル空間で非現実的なソーシャル(社会)に対する、身体を通して実感の伴った確かな繋がりのようなものの再獲得である。