美術科 洋画コースDepartment of Fine Arts Oil Painting

[優秀賞]
太田心|時をきく
岩手県出身
細川貴司ゼミ


細川貴司 准教授 評
 1年次の100号展で、大きな木の幹を力強く描いていた姿が、今も印象に残っている。その頃から太田には、強い精神力と揺るがない意思が感じられた。「これがしたい」「やってみたい」と、1000枚ドローイングなど新たな試みに果敢に挑み続ける姿勢は、常に制作への渇望に満ちていた。一方で、抽象的な表現においては手応えを掴みきれず、空回りしている時期もあったように思う。しかし、生肉という具体的なモチーフに向き合った3年次の細密表現を通して、〈見る〉ことと〈描く〉ことへの確かなスイッチが入った。
 卒業制作では、山から拾い上げた苔むした木の枝や大きな株をアトリエに持ち込み、写真に頼ることなく、目の前の自然物そのものと向き合っている。そこには、形を写し取ることにとどまらず、重さや湿度、匂い、空気と光、そして時間の蓄積までも画面に引き受けようとする実直な姿勢が一貫して貫かれている。逃げることなく対象と対峙し続けたその積み重ねが、自然の存在感を確かな手応えとして立ち上がらせた。
 大学を出てからも制作を続けていくという意志は強く、この姿勢を貫いていけば、いずれ大きく頭角を現していくに違いない。その歩みを、今後も期待したい。