美術科 日本画コースDepartment of Fine Arts Japanese Painting

[優秀賞]
中村玄|おおきなかぶ
宮城県出身
三瀬夏之介ゼミ


三瀬夏之介 教授 評
中村玄は、これまで因習的な日本画の世界に抗うような荒々しくも切実な制作を続けてきた。しかし、それは保守的な伝統を破壊するということが主眼なのではなく、自身の存在の正しいあり様を問い続けるための率直な方法を実践し続けてきた結果と言える。彼がテーマとする「見て見ぬふりの積み重ねによる事象」とは、我々が直視しなければならない真実から目を逸らし、判断や実践を先延ばしにすることによって慢性的に身体内に蓄積される「汚れ」のようなもので、それは現実の私たちの肉体をも滅ぼす諸悪の根源のようなものだ。それを表象し、現実に突きつけるために、彼の活動は日本画にとどまらず、複数枚の絵画を使ったインスタレーションや漫画といったメディアにまで拡張される。自身の絵を見て見ぬふりされないために、卒業制作では多くの人が知るロシア民話の「おおきなかぶ」を換骨奪胎し、鑑賞者の視線を強く惹きつける。大きく育った蕪をみんなの力を合わせて引き抜くという協働における成功譚の裏側に隠された、搾取される「土地」の悲鳴。それを大いなる「大地」の尊厳として奪還する物語が、漫画のコマ割りを用いた独自の組作品として昇華された。