本間智仁|山形市における「軍隊と地域」ー明治末年から大正時代を対象にー
山形県出身
岡陽一郎ゼミ
⽬ 次 1.はじめに/2.先⾏研究/3.32 連隊の概要/4-1.地図から⾒る⼭形市と軍隊/4-2.⼭形新聞から⾒る、⼭形市と軍隊/5.まとめ
現在の⽇本各地には、⾃衛隊やアメリカ軍の基地が存在しており、ここ⼭形県⼭形市にも同県東根市に陸上⾃衛隊の第六師団が駐屯している。しかし、戦前にも旧⽇本軍の部隊が全国各地の都市などに駐屯し、市⺠と共存していたことも事実である。
全国各地に駐屯していた陸軍部隊と地域住⺠の関係は、静岡の事例を研究した荒川章⼆⽒の研究を始めとして、各地で研究が進んでおり、多くの考察がなされている。本論⽂で対象とする⼭形県⼭形市にも⽇清戦争後から陸軍の歩兵第32連隊が終戦まで駐屯しており、同連隊が⼭形市に設置されるまでの経緯や、その後の⽇露戦争での活躍、太平洋戦争敗戦での終焉までが県史や市史で取り上げられている。
軍隊と地域に関わる先⾏研究として代表的なのは、先述した荒川⽒の研究である。荒川⽒は、静岡に設置された軍隊と地域住⺠の関わり、軍隊と地域の揉め事などを考察している。そのほかの研究としては、⾸都圏を対象とした上⼭和雄⽒の研究、新潟県⾼⽥を対象とした河⻄英通⽒の研究が挙げられる。また、連隊と地域を調査した研究としては、群⾺県⾼崎に駐屯した連隊を対象とした今井昭彦⽒、千葉県佐倉市に駐屯した連隊と書店街の考察を⾏った樋⼝雄彦⽒、佐賀県佐賀市に駐屯していた連隊を研究した林美⽻⽒が挙げられる。しかし、各地で⾏われた軍隊の誘致運動や、軍隊と鉄道、⽔道を考察した松下孝昭⽒は、地域の動向が軍隊に与えた影響を⽰す研究が少ないことや、今なお個別事例の蓄積にとどまっていることを指摘している。
⼀⽅32連隊の研究としては、先述したように市史や県史で誘致の動きや、連隊史が述べられている他、軍事郵便を調査した研究はあるが、市⺠との関わりは具体的に述べられておらず、市史内で「市⺠の⼀部に憂慮された⾵紀の紊乱というような事態は、絶無とは⾔い難いであろうが、取り⽴てて⾔う程のことはなかったように思われる」と述べられているのみで、同連隊と市⺠との関わりを具体的に調査した研究は少ないのが現状である。
そこで本研究では⼭形新聞と、⼭形⼤学が公開している「⼭形アーカイブ」に保存されている市街図などを活⽤し、地図と新聞から、⼭形市と軍隊の関係を考察することを⽬的とする。