工藤靖之「ドラえもんの恋愛」

  最近、変なものに後をつけられている気がする。どこへ行くにも青いタヌキの姿が見える。疲れて幻覚でも見ているのだろうか。 家の前にどら焼きが置いてあることもある。食べずに捨てた。遅刻しそうなとき、ドアを開けたら会社だったこともある。通勤途中の記憶がない。怖い。 最初に青いタヌキを見たのはいつからだろうか。そうだ、あれは近所の野良猫に餌をあげていたときのことだった。 家への帰り道、足を引きずっている猫がいた。首輪はしていない。見かねて動物病院に連れていき、治してもらったが、家では飼えない。仕方なしに放したが、時折餌をあげていた。 ある日、いつものように餌をあげていると、視界の端に青いものが見えた。見ると電柱の陰からなにかが、こちらを見ている。青いタヌキのようだが、大きい。小学生くらいあるだろうか。自分の目を疑った。しかし、青いタヌキはじっとりとした目でこちらを見てくる。 私は怖くなり、走ってその場を立ち去った。後ろからだみ声がしたような気がしたが振り返らなかった。 その日から異変が起こった。私の周りにはいつも同じ服を着た小学生がうろつき、家の近所は同じ塀ばかりが並ぶ。 彼氏に相談したところ、動物でも飼ってみたらどうだと言われた。動物に癒してもらえということらしい。彼自身が癒してくれないのかと思ったけど、彼は真面目だから仕方ない。 犬や猫などの大きい動物は飼えないから、ハムスターを飼うことにした。小さくて可愛い。確かにこれなら癒される。 ハムスターを飼ってから、青いタヌキを見かけることがなくなった。どうやら私は疲れていただけのようだ。念のためそのうち病院に行っておこう。 しかし、突然ハムスターがいなくなってしまった。部屋中探しても見当たらない。家の庭も探したが、見つからない。部屋に戻るとき、前に助けた猫の口元が赤く染まっているのが見えた。 部屋で「誰か助けてよ」と呟いた。机の引き出しから青いタヌキがこちらを見ている気がした。   日本語表現基礎2 課題「ドラえもんの恋愛」   スタイルは自由で、ドラえもんの恋愛相手を造形する。アニメの『ドラえもん』の世界観そのままではなく、別の世界観をつくり、相手のキャラクターと恋愛の状態がわかるように書く。という課題への作品