山形の森林資源を使ったゼロカーボン住宅

三浦秀一(みうらしゅういち)

持続可能な社会における住宅とは?

山形県によって建設された山形エコハウスが2010年3月、完成した。国費を投じてつくられた山形エコハウスが目指したのは森林資源を活かした二酸化炭素を出さない住宅である。現在、日本は2020年までに25%削減を目指しているが、実はこれで地球温暖化を防止できるわけではなく、2050年までに住宅で排出される二酸化炭素はほぼゼロにしなければならないのである。すでに、欧米では新しい住宅の二酸化炭素排出量をゼロにすることが政策的にも進められており、我が国でも同様の検討が進んでいる。果たして二酸化炭素を出さない住宅をつくることは可能なのだろうか。そんな疑問と世界の潮流に応えるべく、山形エコハウスは開発された。

エコ家電やエコカー、世界の経済は環境対策を成長のための戦略的課題としてとらえるようになった。そして、住宅にもエコ化の流れが押し寄せている。山形県の住宅産業界がこうした動きを先取りしていくためには、世界水準の高い目標を持つ必要がある。この鍵を握るのが森林資源であり、山形には豊富な森林資源がある。

木造住宅は鉄骨造や鉄筋コンクリート造よりも、その材料を製造するのに排出される二酸化炭素の排出を低減できる。しかし、木を使えばそれでよいわけではない。地球温暖化防止にとってそれ以上に重要なのは、そこに住むためのエネルギーから排出される二酸化炭素を削減することである。特に寒冷地である山形県では暖房のエネルギーが占める割合は大きい。また、給湯も年間通してエネルギーを要する。そして、照明や家電製品には電気が必要となる。これらのエネルギー消費から二酸化炭素をなくす方法は徹底した省エネと自然エネルギーの活用である。石油も原子力も持続可能な資源ではなく、持続可能なエネルギーは自然エネルギーしかない。

日本の住宅は電化一辺倒になっているが、エコ住宅に必要なのはこの基本の徹底であり、何か新しい技術が我々を救い出してくれるものではない。環境対策で世界をリードする欧州は住宅分野での対策も進む。特に山形の場合、寒冷な気候や森林資源等、類似点も多く学ぶところも多い。暖房を減らすには断熱気密性能を上げることが基本であるが、欧州では日本の基準の約3倍の性能を目指している。この断熱気密性能は冬の寒い住まいを一変させ、暖かく快適な家を生み出す。最小化された暖房と給湯のエネルギーは太陽熱温水器と木のエネルギーで補完し合いながら賄うのが欧州におけるエコ住宅の定番になりつつある。木はもともと吸収した炭素を排出しているので、二酸化炭素を増加させない。欧州諸国では電気による暖房は禁止され、薪だけでなく、手間のかからない新しい木質燃料であるペレットを使う住宅が急増している。最近普及が進む太陽光発電も、決して山形県が不利な条件にあるわけではなく、電力の自給も可能である。

木で家をつくり、木をエネルギーとして使うのは、山と暮らしの循環関係を再構築することである。そして、地域の資源を使うことは、地域の雇用を生み出すことにもつながる。

三浦秀一(みうらしゅういち)

1963年兵庫県生まれ。1992年早稲田大学大学院博士課程修了、博士(工学)。東北芸術工科大学准教授。建築と地域を主眼としたエネルギー計画 や地球温暖化対策の技術評価や政策に関する研究を行う。山形県がカー ボンニュートラルな地域となるよう、住民や自治体とともに実践活動に取り組む。著書(共著)に「都市環境学」(森北出版)、「資源・エネルギーと建築、シリーズ地球環境建築・専門編2」(彰国社)、「省エネ住宅とス マートライフでストップ温暖化、日本建築学会叢書4」(技報堂出版)、「学校の中の地球」(技報堂出版)、「京都議定書目標達 成に向けて、建築・都市エネルギーシステムの新技術」(空気調和・衛生工学会)などがある。2009年に竹内、馬場らとともに著した「未来 の住宅」がエコハウスのもとなっている。