





加藤 『ふるさとCM大賞』は山形のローカルテレビ局YTS(テレビ朝日系列)が、コマーシャルの空き時間を利用して始めた企画です。スポンサーが見つからずに空いてしまったコマーシャル枠を、「ミニミニ観光ガイド」や「歌う天気予報」みたいな自社制作のミニ番組で埋める代わりに、そのCM枠自体を賞品として市町村に提供する映像コンペティションを始めたわけなんです。実際にCM枠を買い取って市町村のPRをするには莫大な予算がかかりますから、観光PRしたい市町村にとっては願ってもない企画で、初めの年は不参加のところも2,3ありましたが、2年目からは全市町村が積極的に応募してくるようになりました。今では「これはいいアイデアだ」って他県の地方局がマネをして、全国的にひろがっています。深夜枠の番組ですが山形のCMと長野のCMを交換してオンエアーしたり、山形で沖縄の『ふるさとCM』を放映したりとかね。まったく知らない他県の小さな街の自己アピールも観ていてとても面白いですよ。この取り組みは言わば山形発信の新しい映像文化ですね。私は第1回から審査員に呼んでいただいて、今年で9回目になります。
加藤 当初は技術的な問題をすごく心配していたんですよ。市町村の広報担当者が自前で撮って演出して…ですから、「ずぶの素人がやって編集ができるだろうか?」、「テレビでオンエアーする最低レベルの映像の質が保てるだろうか?」とね。それが今はほとんど心配なくなったし、逆に素人くさい面白さや、映像プロダクションじゃなくて自分たちで、手づくりでやってる感じを大切にしようとする意識に変わってきました。作品を審査する私たちも、年々向上していく『ふるさとCM』の完成度を、映像の技術で選ぶのではなくて、むしろ「参加することに意義がある」という部分、例えば大勢の町民が出てきて一斉に出演していたりとか、そういう映像をピックアップしようという独自の傾向が出てきていますね。『ふるさとCM大賞』は今年で9回目。僕は初回から見続けていますが、選ぶ側の責任が年々増して来ている様に感じています。県民の映像技術が格段に上がってきていますから。それはまず映像作品を発表する場があるということ。そして賞を取ると一年中デレビで放映されて、同じ街に暮らすいろんな人から批評や感想を受けるわけですからね。
加藤 まず映像計画コース(現・映像学科)がいくつかの市町村の応募作品を手がけてきました。これはCMを作る授業の課題としてふるさとCMに取り組むわけですが、「〈ふるさとCM大賞〉に出品するあなたの町の映像を撮らせてもらえませんか?」と街の担当者に売り込むのです。これは映像を学ぶ学生にとってとても良い勉強の機会になる。例えば「資生堂とかコカ・コーラのコマーシャルを作ってみましょう」という課題で偽物を作らせてもダメですよ。時代の雰囲気の上澄みだけをすくったような、模倣的な表現ばかりが出てきてしまう。けれども市町村の『ふるさとCM』は、現実にその市町村をピーアールする効果が求められるわけだし、しかも上手くいけばテレビに流れる。仮想の中でCMごっこをするのではとまるで次元が違うのです。昨年の大賞は山形市だったのですが、これも文翔館でロケをした学生作品でした。卒業生が制作に携わっているケースもかなり多いです。地域の方々も、若い人たちの視点を新鮮に感じてくれているようです。山形には『山形国際ドキュメンタリー映画祭』の伝統もあって、こちらも運営にたくさんの映像学科生たちが携わっています。こうした草の根的に地域にひろがっていく参加型プロジェクトが、学生や市民の本当の意味での「映像リテラシー」を育てていくのだと私は思います。
