学長から受験生へのメッセージ

クリエイションできる人材を地域と育む
学長/ 根岸吉太郎

自ら課題を見つけていく

普段私たちは、どうすれば「解決」できるかを突き付けられがちですが、実はそれ以上に難しく、重要なのが、「課題」を見つけること。決まったことをやるだけなら誰でもいい、もしくはロボットでもいいという時代が迫りつつある今だからこそ、自分から取りかかるべき課題を見つけ、それに対しどうクリエイション(創造)、イノベーション(変革)できるかを考えていける人材を育てていきたいのです。アートやデザインなどモノをつくり出そうとする時は、まずどういうテーマでどういう切り口にするかを考えますが、それもある種、課題を見つけることであり、一番大事な制作のスタートとなるもの。そして、それは人生のあらゆる局面でも求められます。どうやって生きていくのか、また、どんな幸せを求めるのかを考えることはアートやデザインを思考することと重なりますから、ここでその訓練を積んできた学生たちは、強みを持って社会に出て行くと言ってよいでしょう。そんな課題の発見と解決に必要な感覚を、地域と向き合いながら実践的に養っていけるのが芸工大での学びの大きな特長であり、課題を多く抱える地方に大学がある利点となっているのです。

山形、東北で学ぶということ

この大学は蔵王の懐に抱かれ、出羽三山や朝日連峰に向かって開けています。雄大な景色の中でものを考えたり、つくったりできるという幸せなゆとりがある一方で、この美しい山形の自然の向こうには、3・1 1以降、いまだに暮らしていた場所に帰れない人たちがたくさんいるという現実があります。あれから6年の月日が流れましたが、これからがいろんな意味で復興に向けての勝負どころとなるでしょうし、この大学は、これからの日本の在り方を、日本の大学の中でいちばん考えていかなければならない使命を持っていると思っています。山形にいるということは、東北が抱える問題を肌で感じていくということ。ここで自分がどうあるべきかを考えながら過ごす4年間は、社会に出た時、問題とどう向き合うかを考える上でとても大切な経験となるはずです。そしてこの4年の学びを支えるのは、日本の芸術・デザイン分野の第一線で活躍する才能ある教員たち。山形に住む教員はもちろん、東京からも多くの教員が毎週のように山形に通い、大学で何時間、何日間と学生たちと関わり合っています。
また、ここ近年では、教員とともに地域の課題解決に取り組む卒業生の活躍も目覚ましく、山形市の中心市街地にある空きビルをリノベーションした『とんがりビル』の誕生や、2年に1度開催している『山形ビエンナーレ』への参画など、街なかに大きなムーブメントが生まれています。もしかしたら、デザイン思考や芸術家魂を持った卒業生が市長や県知事になる日もそう遠くないかもしれません。

まずは一歩外側へ

高校生の頃というのは、人生で一番純粋かつ敏感にヒトやモノに反応できる時期です。まずは自分のひと回り外側にあるものに目を向け、その中で一体何が新しいのかを鋭敏な感覚でとらえてみてください。そして、日々の生活においても「何かおかしいな」とか「もっとこうした方がいいのにな」と思うものを自ら見つけ出してみてください。それこそが、これからのクリエイターに求められる大事な力。社会や世界に向けてアンテナを張りながら、今までにないモノやコトを発想していける人材をともに目指していきましょう。

学長/根岸 吉太郎
ねぎしきちたろう/ 1950年東京都生まれ。早稲田大学第一文学部演劇学科卒業後、日活に入社。2009年、『ヴィヨンの妻 ~桜桃とタンポポ~』でモントリオール世界映画祭最優秀監督賞受賞。2010年には紫綬褒章を受章。