つぶやきを活用したリピーター向けの飲食店情報スマートフォンアプリの開発と事業化 阪野正義

□研究目的
 高機能携帯情報端末スマートフォン(以下:スマホ)の普及に伴い、モバイル環境での情報閲覧は当たり前の世の中になった。しかしその一方で、人間が扱いきれない程の膨大な量の情報が溢れかえり、閲覧者は縦横に情報を集める技術を身につけ手間をかけなければならなくなった。情報を発信する側は、情報を届けるための工夫が欠かせない。近年の消費者は、インターネットで情報を検索して行動するという習慣が当たり前になっているからだ。本研究では、スマートフォンアプリ(以下:アプリ)を用いて飲食店が発信する情報を、消費者が手間無く受け取れる仕組みを開発し事業化を考えていくものである。
□研究方法
 研究の手順は、飲食店を取り巻く現状や、飲食店情報サービスの現状を調査し、アプリのデザイン・機能案を企画書、仕様書にまとめた。アプリをコア事業として5つの事業モデルを策定し、それに基づくビジネスモデルを収益のシミュレーションをおこなった。更に、ターゲットとなる飲食店、創業支援の専門家に企画提案し、事業の可能性を検証した。
□飲食店とグルメ情報サービスの現状調査
 外食産業は23兆円規模(平成23年データ)とも言われているが、平成9年をピークに減少に転じている。一方で、平成9年に全国的に展開した「ぐるなび」と平成17年にリリースした「食べログ」は、両者ともに右肩上がりの業績を続けている。外食産業が減少傾向にある飲食店は、約67万軒あるうちの76.3%が個人事業であるという。グルメ情報への需要は年々高まりをみせているが、経営規模も小さく情報発信に手間をかけにくい現状が飲食店にはある。
□ITの現状調査 スマートフォンの普及とO2Oサービスの萌芽
 スマートフォンの普及率は、2012年には約40%にまで拡大した。普及の一因として、各種センサーを用いたアプリによって便利な機能を享受できる点にある。それと相まってO2O(オンライン・トゥ・オフライン)と呼ばれる、オンラインから実店舗に送客するサービスが2012年頃から注目されてきている。
□リピーター向け飲食店情報アプリ「COLLETABE(コレタベ)」サービス概要
1) コンセプトとネーミング
 飲食店が発信する情報をもとに、消費者が来店動機を高めるO2Oサービスとしてアプリを考えた。例えばお昼時に近所の飲食店の日替わりランチ情報を見比べて「これを食べよう!」という、消費者のお店選びを手助けする。イメージは飲食店でよく使われる「黒板」の書き換えられるメニューである(図1)。お気に入りの飲食店のコレクションを掛け合わせ「COLLETABE」というネーミングにした。
2) COLLETABEアプリの飲食店情報の特徴
 アプリの基本画面は使用者の位置情報をもとに地図を表示し、飲食店の所在地にアイコンと飲食店が発信するつぶやき(SNSなど高頻度で発信される情報)を吹き出しで表示する(図2)。飲食店情報は既存のSNSやブログで発信されているものを使い、飲食店は新たにアプリの使い方を覚えるという必要はない。アプリの利用ユーザーは、従来散らばっていて検索が必要であった飲食店情報を、アプリの起動だけで複数知ることができる(図3、図4、図5)。
□事業モデル案
 提案するアプリをコア事業とした創業・事業の継続をするために、飲食店情報サービスとO2Oサービスの領域から5つの事業モデルを策定した(図6)。
モデルA 総合地域情報プロデュース事業モデル
モデルB 飲食関連情報事業モデル
モデルC 飲食店情報アプリ運営・情報発信サポート事業モデル
モデルD 飲食店情報アプリ運営 プレミアムサービス事業モデル
モデルE 飲食店情報アプリ運営 広告事業モデル
□事業モデルの検証
 次の3つの検証を通して事業モデル案を絞っていった。
1) 個人からのスタートアップの実現性、他社との競争性、資金繰りの検証
2) ビジネスモデルのシミュレーションによる収益性の検証
3) 飲食店・創業支援専門家へのヒアリングによる検証
□採用モデル
検証を通して「モデルC 飲食店情報アプリ運営・情報発信サポート事業モデル」を採用した。このモデルは、飲食店の情報発信を対面的にサポートし、各種デザインを請け負うモデルだ(図7)。実際にWEB用の素材、チラシ販促物等のデザインを受注することができている。飲食店からのアプリへの期待も高く、飲食店の集客をサポートする事業としての可能性があると思われる。
□結論
本研究では、消費者の外食先を選ぶ行動を変えるアプリの提案を軸に、事業化による実現性を検証してきた。アプリの提案をコア事業として事業を検討してきたわけだが、飲食店は各種情報ツールを知るところから課題があり、効果的な情報発信の方法も経験が不十分であることがわかった。対面的にサポートするサービスが創業時の収益性の観点からも現実的であり、また事業拡大時の融資・助成金でもアプリ単体より可能性が高いことも専門家の意見からわかった。本研究で提案するアプリは、飲食店に限らず他業種の経営者からも関心が高く案件相談もあった。売り手と買い手の行動を、アプリによる情報の表現方法によって変えていくことができ、それがビジネスチャンスとなることが本研究から考察できた。 
 
左から:1.飲食店の黒板を印象づけるアイコン/2.複数の飲食店情報が表示される画面
3.飲食店が発信する新着情報一覧/4.画面遷移図
 
5.飲食店情報を集める仕組み/6.事業領域/7.モデルCの事業構造 
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