創発型のスペースマネジメントとキュレーションの方法論についての実践的研究 福田亮佑

第1章 創発型のスペースマネジメント
 新世代のコミュニケーションツールの浸透とそれに伴う行動様式の変化は、価値観の多様化をもたらした。あらゆるものごとに対し最適化・効率化を図る手法がとられているが、そのようなリニアな進化だけでは限界に差し掛かっている。他に比べ、より優れたものを作ろうと客観視すればするほど差別化不全に陥っているのが現状である。従来の手法では乗り越えられない壁を突破させる方法として「創発」をとりあげる。人々が自然と集まりコミュニティを作り出すような場を「創発型のスペース」と定義し、そのマネジメントをいかにして行うか。また、創発を促し、より良質な場を育てるためのキュレーションの方法論を確立させたい。

第2章 創発
 創発とは個々の要素の総和にとどまらない性質が全体として現われることであり、予測不可能な特徴を併せ持つことである。コミュニティにおいても創発性を求めることは人々の多様性を保持し、個人間の相互作用が起きやすい場をつくることである。ただし、これは同時にリスクを抱えることでもあり、コントロールが効かない働きが生まれることもある。創発を起こすにはこれらのリスクを許容した上で、成果が生まれるような場を作らなければいけない。本論では要素を人として捉え、場所と骨格となるシステムを提供するのみで肉となるコンテクストは利用者自身が作りだすような環境を創発型のスペースとする。「ある目的を達成する」ことではなく、「何かを作り出す(作り続ける)」ことに意味を見いだす。

第3章 キュレーション
 キュレーションとは、近年使われるようになった「ある視点のもとで情報を収集、分類し、共有化する」ことを意味する言葉である。創発が起きている環境をある種のブームのような一過性で終わらせるのではなく継続させていくには、発展・増殖・進化といったスパイラルなループが欠かせない。キュレーションにより場に求心力を生み出し、創発が起きる可能性を高める。

第4章 現代社会に見える創発的現象
 現代社会において創発的現象にあげられるものとしては、Facebook等のSNS、ブログ、twitterに代表されるCGM(消費者生成型メディア)がある。
 初音ミクムーブメントや中国反日デモもその一例である。これらは新しく浸透したコミュニケーションツールによってもたらされたものであり、今まででは考えられないほどのスピードで巨大な広がりを見せるという創発的現象につながった。

第5章 花告プロジェクト 〜産学連携プロジェクトによる実践
 花の市場の創発を目指し、2009年度から花告プロジェクト(写真1)に取り組んでいる。これは花の需要が全国1位である仙台から若者男性を対象に“花を贈って愛を告げよう─花告”という新習慣を提案しようという活動である。このプロジェクトは仙台の花の卸売会社や花屋、仙台市産業振興事業団などの協力を得て取り組まれている産学連携プロジェクトである。
 2011年はwebサイトの制作(写真2)や仙台市内で行われたイベントにてワークショップを実施。仙台在住のデザイナーとともに男性でも気軽に持ち運ぶことができる花束のオリジナルパッケージ(写真3)の開発を行った。2012年3月12日13日に集大成的イベントである「花告の日」イベント(写真4)を開催しようと企画していたが、その準備中に震災を受け中止を余儀なくされた。
 一時はプロジェクトの存続の危機も訪れたが、チャリティイベント(写真5)を行いプロジェクト活動の維持を図る。その後、2012年11月に幕張メッセで行われた中小企業総合展JISMEE2011内の仙台パビリオンでの展示(写真6)が決定。伊達武将隊に出演してもらったプロモーションムービー(写真7)の制作、それと連動させたステージイベント「伊達な男の花告講座」(写真8)を行い、仙台発信の市場開拓プロジェクトとしてアピールを行った。

第6章 震災からの復興へ向けて
 震災以降、様々な復興プロジェクトが立ち上がっているが、これを一時的なブームのように終わらせてはならない。キュレーションにより各主体に潜む価値観の共有化を図り、日本を大きな場としてとらえ求心力をつくりだすことが長く続く復興の文脈を導くことになる。

第7章 結論
 情報を一様に発信していくことが不可能になった現代において、これから創発という視点はもはや必須事項となりうるだろう。集団ではなく、あくまで個人の集まりだということを念頭に置かなければならない。いかにして人々の間に求心力を持たせ、場を増殖させるかが今後の鍵となる。
 数字や情報などのコンテンツが容易に入手でき、それを集めることは現代人の必須スキルである。しかし、それに対し分析をかけ最適な設計、効率的な管理を行っていても、限界が見え始めている。これらは身につければ誰もが活用できる反面、やれば同じようなものとなり差別化不全を引き起こすだけでなく、衰退への道をたどることになる。
 壁を突破し高次のレイヤーへと押し上げるには、創発的現象によってのみ可能である。これまでも偶発的に創発的現象が起きてはいるが、このグローバル化していく社会ではそれを促していく試みをしていかなければいけない。
 要素間の関係性をとらえ場の文脈を読み取ることでより良い関係性が作り出されるように価値観を共有化させる。こうしたキュレーションによって場に求心力を生み出し、創発する可能性を高めていくのである。


左から :1.花告ロゴ/2.Webサイト/3.オリジナルパッケージ/4.花告の日ポスター


左から:5.チャリティイベント/6.中小企業総合展/7.伊達武将隊×花告ムービー/8.伊達な男の花告講座

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