中国アニメ市場における成功するアニメ作品の企画制作の研究 陳偉偉

1. 研究目的
 日本のアニメ産業はマーケットが大きく、質量ともにビジネスモデルも確立されている。その一方で、現在の中国のアニメ市場はまだまだ未成熟な新しい産業と言われている。中国のアニメマーケットでビジネス的な成功を収めるには、とくにストーリーの分析・評価・開発が重要であると考えている。その前提として、急激に拡大している中国市場の文化特性や環境によって、どのようにアニメ作品を企画し、アダプテーションすればよいのかなどを調査分析し、ローカライズをどのように実行するべきかを、日本のアニメを中心に中国、米国のマーケット研究を行った。

2. 中国エンターテイメント市場の現状分析と仮説
 エンターテイメント市場のユーザーは主に都市生活者である。その都市生活者の多くは収入レベルが上がり、可処分所得が増加し、消費観念に変化が見られる。それに伴いコンテンツ市場は確実に伸びている。
 しかし、「一人っ子政策」の影響で中国社会は今後急速に少子高齢化時代を迎えることになる。子供の人数は減少しつつ、その一方で子供向けのアニメとコンテンツ制作会社は増えている。この傾向が続けば、中国アニメ産業のマーケットはいずれ飽和状態になると考えられる。その状況になる前に、いち早く新しい客層をターゲットとする、準備をするべきだと考える。
 以前に中国のアニメ、漫画、ゲーム業界はそれぞれの事業領域が棲み分けられており、ほとんどメディアミックス等のビジネスシナジーも考慮されていない。アニメ会社の企画はオリジナルのものが多い。すべての人気アニメは制作本数で収益を上げている。しかし前期の投資は多く、そのためにクオリティも落ちるし、資金の回収にも時間がかかり、リスクは更に高くなる。
 近年中国の映画、アニメ、漫画、電子書籍業界はそれぞれの事業領域で急成長している。これからエンターテイメント市場ではユーザーたちの選択により、良いマンガと小説の原作がどんどん出てくると思われる。ハイクオリティな映像作品の企画、表現技術、マーケティングが求められることになる。メディアミックスの始まりが見えるようなってきている。

3. 企画開発力について
 今後の中国アニメ市場には、企画開発力が重要であると考えられる。これから必要なスキルはコンセプト分析とアダプテーション能力だろう。
 ?ストーリーコンセプト分析
 ストーリーコンセプトは、専門的にはプレミスと呼ばれており、その作品の特徴を一言二言で端的に明快に象徴的に表現したものを指す。ストーリーコンセプト分析はストーリーテーリングというストーリー表現技術の基本を前提として、理解した上で分析を行っている研究である。作品のプレミスとなる内的要因とそれらを取り巻く外的要因をもとに、作品のヒット分析とヒット予測によって、マーケティングや広告宣伝の強化を図ることを中心に捉えている。
 ?アダプテーション能力
 今後の中国アニメ市場ではメディアミックスが徐々に進んでいくと考えられ、小説やマンガなどの原作を映像化することが増えると予想される。その際アダプテーション能力がますます重要になってくる。
 アダプテーションは単純に原作をそのまま映像化するだけでなく、長い原作から登場人物選択、キャラクター設定(職業選択)、ジャンル、ストーリー構成、人物関係などの要素を映像化する際に書き直さなければならない。

4. リサーチについての提案
 アニメビジネスとして、収益を上げるためには、できる限りコストとリスクを減らさなければならない。制作段階に入ると、もう後戻りできないのだから、企画段階のはじめに、コアターゲットを明確しなければならない。消費者はコアターゲットから広がっていくからである。
 リスクを減らすため、キャラクターとストーリーには時間をかけてリサーチすることが重要だ。しかし中国は国土の面積が広く、人口分布が均一ではない。そのうえ地方の文化も違う等、一つずつリサーチするのはとても困難であるので、以下のような文化圏や人口密度などでマーケットを把握することにした。
 文化圏(ぶんかけん)とは、一定の文化様式によって結びつけられた地域を指す。中国の風習文化は地形、気候、物産などによって七つの文化圏に分けられる(図1)。人口が集中している五つの文化圏の範囲内(図2)、代表的な都市で、コアターゲットを対象にリサーチするのはより効率的である。調査のコストも減らすことができる。

5. 研究のまとめ
 中国でのアニメのビジネス的な成功には、川上になる原作の企画・開発が必要だと分かってきた。ヒットする可能性のある作品、コミック、小説などをいち早く選び出し、企画段階のはじめにコアターゲットを明確にして、世界観の設定とキャラクター、ストーリー開発に十分な時間をかけることが重要である。そして、常にアニメマーケティングの新しい情報を把握し、TV放映、劇場公開における宣伝手法や販売戦略にも地域文化特性や区域によってそれぞれに適切なアプローチが求められると考える。製作コストとリスクを減らし、安価で良質なアニメの制作は、中国のアニメマーケットで優位性を築く上で、とても重要な要素である。


左から1.中国七つの文化圏/2.人口の密度と年齢の分布状況

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