物語制作に置ける価値の創造 有坂真琴

1. 研究概要
 情報化社会と言われる現代、映画に始まり、アニメーション、漫画、ビデオゲーム等、あらゆる娯楽コンテンツが巷に溢れるようになった。
 その中でコンテンツの良し悪し、ひいては商業的な成否を決める重要で普遍的な要素の一つとして、『物語性』があげられる。昨今ではユーザーの消費パターンが多様化し、コンテンツ産業の構造も大きく変わろうとしているが、物語の持つ魅力は普遍的であり、良質なコンテンツには良質な物語が不可欠である。
 あらゆるコンテンツにはストーリーが存在し、人々はその物語に共感し没入することで怒り、悲しみ、笑い、涙し、感動する。物語が良ければ、登場人物が気に入らないだとか、音楽がイメージに合わないだとか、そういう些細な問題は吹き飛んでしまい、観客はコンテンツに没入し、共感する。物語のもたらすその『共感』こそが、観客の求めるものであり、私が求めるものであり、物語の価値を決める物であると、私は思う。
 この研究では、『プロのクリエイターが作る対価を得るに足る良質な物語とは何か』を研究し、ライティングを実践した。時にwebゲームのライター、時に映画の脚本、時にツアーの脚本等を行い、物語で観客を満足させる技術を学ぼうとしてきた。
 そしてその集大成として一本の長編シナリオを制作し、『ビジュアルノベル』の企画として制作を行った。

2. 成果物
●タイトル:『アルラウネ、墓場に咲いた花』
 ジャンル:ファンタジー
 媒体:ビジュアルノベル/電子書籍

●企画概要
 ドイツを始めとするヨーロッパの伝承にある花の精『アルラウネ』をモチーフにした、ファンタジー小説。電子書籍として小説(ライトノベル)に近い形式で、従来より絵の比率を増やした『ビジュアルノベル』として制作・販売する。

●ストーリーコンセプト
 近世ヨーロッパの様な世界のとある鉱山街で、孤独な青年が花の精『アルラウネ』に出会い、育てる。持ち主に知恵と富を与えるという伝説を信じ、青年はアルラウネを成長させ信頼を築くが、同時に街の人々もアルラウネを求めていた。
 街を力で支配しようとする領主。死と貧困に満ち溢れる街を変えようとする商人達。街の行方をめぐる抗争に青年とアルラウネは否応なしに巻き込まれ、やがて彼らの周囲では生死を懸けたアルラウネ争奪戦が始まってしまう。
 シナリオの構造は神話学者ジョーゼフ・キャンベルの提唱した、人類が共通して本能に持つ物語の原型『ヒーローズ・ジャーニー』の構成を踏襲し、より普遍的な、直感的にテーマを感じられる物語となるように務めた。

●主要登場人物
・マックス(図1)
 元鉱夫の墓守。鉱山労働中の落盤事故で顔と足を負傷しており、その外見の所為で街人から「墓掘屋」「死神」のあだ名を付けられている。卑屈で厭世的な性格だが、心の底では孤独に悩んでいる。
・カロラ(図2)
 無実の罪による死体の跡から生まれた本物のアルラウネ。純粋で物知らずだが、心優しく、他者を疑わない。生存の為に、パートナーと認めた一人の人間と信頼関係を結び、尽くす習性がある。

●開発形態について
 想定する販売方法として、電子書籍としてスマートフォンやタブレット端末(図3)をメインにコンテンツを提供する。
 昨今これらの端末の普及に伴って、電子書籍も次代のメディアの一つとして期待されている。日本国内だけでも2011年3月時点で1000万近い利用者がおり、今後も市場が拡大し続けていく事が予測される。


左から:1.マックス/2.カロラ/3.タブレット型端末(ipad)/4.ビジュアルノベル(電子書籍)

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